和歌のあそび訳

マイブームの『百人一首』をいまどきな感じで訳してみました。 〈作者の談〉は歌の作者のコメント的な、解説を含んだフィクションです。 人格設定は妄想。

百人一首 19.難波潟

19 難波潟 短き芦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや (伊勢) なにわがた みじかきあしの ふしのまも あわでこのよを すぐしてよとや (いせ) 難波潟の芦の節と節のあいだくらい、すっごい短い時間すら会ってくれないのね。あたしはちょっとでも…

百人一首 18.住の江の

18 住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ (藤原敏行朝臣) すみのえの きしによるなみ よるさえや ゆめのかよいじ ひとめよくらむ (ふじわらのとしゆきあそん) 住の江の岸に波が寄せてきたり帰って行ったりって、行ったり来たりの恋み…

百人一首 17.ちはやぶる

17 ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは (在原業平朝臣) ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは (ありわらのなりひらあそん) 神話でもこんなすごい話は聞いたことないよ。龍田川が紅葉で水をくく…

百人一首 16.立ち別れ

16 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む (中納言行平/在原行平) たちわかれ いなばのやまの みねにおうる まつとしきかば いまかえりこん (ちゅうなごんゆきひら/ありわらのゆきひら) じゃあ、行ってくるね。待っててね。因幡の…

百人一首 15.君がため

15 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ (光孝天皇) きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ (こうこうてんのう) 大好きなあなたにあげようと思って、まだ雪の残る野原に来て春の七草摘んでます。…

百人一首 14.みちのくの

14 みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに (河原左大臣/源融) みちのくの しのぶもぢずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに (かわらのさだいじん/みなもとのとおる) みちのくに「しのぶもじずり」っていう乱れ模様の布…

百人一首 13.筑波嶺の

13 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる (陽成院/陽成天皇) つくばねの みねよりおつる みなのかわ こいぞつもりて ふちとなりぬる (ようぜいいん/ようぜいてんのう) 筑波山から流れてくるあの『みなの川』がさ、下流に行けば行く…

百人一首 12.天つ風

12 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ (僧正遍照) あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ おとめのすがた しばしとどめん (そうじょうへんじょう) 空に吹く風さん、雲の中にある天女の通り道をふさいでくれないかな。ここで舞って…

百人一首 11.わたの原

11 わたの原 八十島かけて こぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣舟 (参議篁/小野篁) わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね (さんぎたかむら/おののたかむら) メッチャ広い海の、メッチャたくさんある島に向かって、いざ…

百人一首 10.これやこの

10 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 (蝉丸) これやこの いくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき (せみまる) おおっ! これかぁ! 地方へ行く人もいれば都に帰る人もいる。ここで見送ったり出迎えたりするん…

百人一首 9.花の色は

9 花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に (小野小町) はなのいろは うつりにけりな いたずらに わがみよにふる ながめせしまに (おののこまち) あーあ。あんなにきれいだった桜の花も、雨続きで台無しになっちゃったわ。あ…

百人一首 8.わが庵は

8 わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり (喜撰法師) わがいおは みやこのたつみ しかぞすむ よをうじやまと ひとはいうなり (きせんほうし) わたしの庵は都から東南方向に離れているのですが、こんなにも自由気ままにシングルライ…

百人一首 7.天の原

7 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも (阿倍仲麻呂) あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも (あべのなかまろ) この広い広い空に見えるあの月。昔、春日大社にお参りに行ったとき、三笠山の上にも出…

百人一首 6.かささぎの

6 かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける(中納言家持/大伴家持) かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よるぞふけにける (ちゅうなごんやかもち/おおとものやかもち) 七夕の日にかささぎがずらーっとつながって…

百人一首 5.奥山に

5 奥山に もみぢ踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき (猿丸太夫) おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき (さるまるだゆう) 紅葉の落ち葉の中を歩きながら雄鹿が雌を探すんだって。そのときの鳴き声がメッチャ悲しそ…

百人一首 4.田子の浦に

4 田子の浦に 打ち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ (山部赤人) たごのうらに うちいでてみれば しろたえの ふじのたかねに ゆきはふりつつ (やまべのあかひと) 田子の浦いいね! ここから富士山が見える! ほら見てよ! 山のてっぺんに…

百人一首 3.あしびきの

3 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む (柿本人麻呂) あしびきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん (かきのもとのひとまろ) 山鳥のしっぽってすっごく長いだろ? 秋の夜だってすっごく長いんだよ。そ…

百人一首 2.春過ぎて

2 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山 (持統天皇) はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま (じとうてんのう) 段々あったかくなって、春だわねぇ、なんてのんきにしてたら、いつの間にか春終わったのね…

百人一首 1.秋の田の

1 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ (天智天皇) あきのたの かりほのいおの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ (てんじてんのう) 秋の収穫時期にね、田んぼのそばにあるぼろっちい小屋で夜通しケモノの見張り番をす…