和歌のあそび訳

マイブームの『百人一首』をいまどきな感じで訳してみました。 〈作者の談〉は歌の作者のコメント的な、解説を含んだフィクションです。 人格設定は妄想。

百人一首 6.かささぎの

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6 かささぎの 渡せる橋に おく霜の
   白きを見れば 夜ぞふけにける(中納言家持/大伴家持

  かささぎの わたせるはしに おくしもの
   しろきをみれば よるぞふけにける
            (ちゅうなごんやかもち/おおとものやかもち)

 

七夕の日にかささぎがずらーっとつながって天の川に橋ができるでしょ? その橋に霜が降りたのかもって感じに、真っ白な星がいっぱいですっごくきれい。ずーっと見取れてたらいつの間にか真夜中になってたよ。

 

〈作者の談〉
 天の川って見たことある? ほんと空に川が流れてるみたいに星がかたまってるの。天の川と言えば七夕、七夕と言えば織姫と彦星だよね。なんでも中国の故事では、二人が会うときにかささぎが羽を広げて橋になってくれるんだって。それで二人は一年に一度だけ会えるんだよ。切ないけどロマンチックぅ。天の川を見るたびにそんなことを考えてたら、つい時間が経っちゃってね。人がいないからいいけど、夜中にニヤニヤして空見上げてたら完全に不審者だよね。しかも見てたのが七夕の日じゃなくて冬だし。寒いし。震えながら見てたもんだから、天の川が凍ってんじゃないかって思えてきちゃったんだよね。そりゃあ、橋も霜で白くなるってもんだよ。
 でもちょっと待って。実はね、もうひとつ思ったことがあるんだ。かささぎが作った『橋』。これって宮中の階段を意味する『端』とかぶせてあるんだ。宮中の御殿は天上にも通じるし、これってまんま天の川にかかる橋とリンクしてるんだよ。夜中に御殿の階段が霜で白くなっててさ、もうそんな夜更けかぁ、って思ったってこと。二通りの意味を持たせるなんて、さすが僕だよね。
 あ、夜中に宮中を徘徊してたわけじゃないよ? ちゃんと仕事だから。