百人一首 11.わたの原
11 わたの原 八十島かけて こぎ出でぬと
人には告げよ あまの釣舟 (参議篁/小野篁)
わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと
ひとにはつげよ あまのつりぶね (さんぎたかむら/おののたかむら)
メッチャ広い海の、メッチャたくさんある島に向かって、いざ出発! ・・・って感じで旅立ったって、都にいる恋人に伝えてくれないかな、そこの漁師さん。
〈作者の談〉
オレ、このとき島流しにあってたんだよね。前途洋々に旅立ったみたいに言ってるけど、ホントはむっちゃ辛かったんだよ。
っていうのもさ、思い出したらすっげー腹立つんだけど! オレ、遣唐使に選ばれてて、で、準備中に役人の藤原常嗣(ふじわらのつねつぐ)とケンカになったんだ。だってアイツ、オレに沈みそうなボロ船よこしたんだぜ! ふざけんなって話。だから乗船拒否してやったわ。ついでに政治の批判までしちゃったもんだから、嵯峨上皇にブチ切れられて流罪。いらんことしなきゃよかったーって後悔しても遅すぎだよね。
何かオレ、ちょいちょいよけいなこと言っちゃうんだよね。思ったまま口に出しちゃうっての? 自分に正直なだけだと思うんだけどね。周りは変わりモンとか思ってて「野狂」とか変なあだ名付けやがったんだぜ。ムカつく。
でもまぁ、そんなオレでも漢詩のセンスは抜群だからさ、二年もおとなしくしてたら都に帰してもらえたんだよね。やっぱオレがいないと始まらないんじゃない? はっはっは!