百人一首 15.君がため
15 君がため 春の野に出でて 若菜つむ
わが衣手に 雪は降りつつ (光孝天皇)
きみがため はるののにいでて わかなつむ
わがころもでに ゆきはふりつつ (こうこうてんのう)
大好きなあなたにあげようと思って、まだ雪の残る野原に来て春の七草摘んでます。ほら、また雪が降ってきた。袖が濡れて冷たいけど、まだまだ頑張ります。
〈作者の談〉
僕ね、ホントは自分で何でもやっちゃう人なんだよね。天皇になるまでが長かったんだけど、そのあいだ、わりと庶民的な生活してたんだ。掃除洗濯ご飯支度。だから野原で野草摘むのもお手の物なんだけどさ、さすがに周りの人に止められたね。地べたにはいつくばるのは天皇がすることじゃないんだって。面倒くさいね。最初は人が取ってるのを見てたんだけど、何かやきもきしてきて飛び出しちゃったよ。しょうがないな、って顔で見られてたのは気付かないフリしておいた。夢中になって取ってたらいつの間にか雪が降りだしてたんだけど、ほら、気分が乗っちゃって止められなくなるときってあるでしょ? 散々注意されてようやく手を止めたら全身びしょびしょになってて、やっぱり怒られたよ。天皇なのに注意されるとか怒られるとか、どうなんだろうね。まぁ、おかげでどっさり七草が取れたから、さておかゆにしようかな、って思ったら最高に怒られたね。さすがに調理はさせてもらえなかった。僕、結構料理上手なんだけどな。