和歌のあそび訳

マイブームの『百人一首』をいまどきな感じで訳してみました。 〈作者の談〉は歌の作者のコメント的な、解説を含んだフィクションです。 人格設定は妄想。

百人一首 16.立ち別れ

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16 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる

   まつとし聞かば 今帰り来む (中納言行平/在原行平

  たちわかれ いなばのやまの みねにおうる

   まつとしきかば いまかえりこん 

               (ちゅうなごんゆきひら/ありわらのゆきひら)

 

じゃあ、行ってくるね。待っててね。因幡の山にも松が生えてるっていうけど、キミも僕を待っててくれるかなぁ? そんな噂聞いたらすぐにでも帰ってくるからね。

 

〈作者の談〉

因幡に転勤なんてさみしいよね。ちょっとやそっとじゃ彼女に会えないし。『待つ』と『松』をかけて、彼女に「待っててね!」ってアピールしてるんだ。『因幡』と行っちゃうよって意味の『往なば』もかけてみて、未練たっぷりな感じも出してみた。あー、行きたくないよー。悲しい宮仕えの身だからさ、転勤したくないなんて言えないよね。

 彼女と別れてひとりさみしく因幡に行って頑張ったよ。頑張ったのにさ、都に戻ったとたん須磨に追いやられてさ、何かもう踏んだり蹴ったりだよね。それをさ、あの紫式部さんがちらっと物語のネタにしたんだよね。主人公が須磨でさみしく暮らしましたってとこ。まぁ、僕はちょっと色っぽい話も持ってるんだけどね。あ、彼女は全然待っててくれませんでしたー! 

 僕は弟と違ってこういう話はあんまりないんだよね。弟って、女好きの業平(なりひら)。母親が違うんだけど、何でアイツばっかりモテるんだろう?