和歌のあそび訳

マイブームの『百人一首』をいまどきな感じで訳してみました。 〈作者の談〉は歌の作者のコメント的な、解説を含んだフィクションです。 人格設定は妄想。

百人一首 18.住の江の

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18 住の江の 岸による波 よるさへや

   夢の通ひ路 人目よくらむ (藤原敏行朝臣

 

  すみのえの きしによるなみ よるさえや

   ゆめのかよいじ ひとめよくらむ (ふじわらのとしゆきあそん)

 

住の江の岸に波が寄せてきたり帰って行ったりって、行ったり来たりの恋みたいよね。あ、よる、と言えば『夜』のことなんだけど、あの人ね、ちょーっと人目を気にしすぎなのよねー。だって夜よ? しかもあたしの夢の中。会いにも出て来てくれないってどういうことよ?

 

〈作者の談〉

 私の実体験じゃありませんよ。歌会でたまたま詠んだ歌です。人によっては女性目線でこんな意味にとったり、男性目線で、「あの子に会いに行けないよー」と小心者の気持ちになってみたりと、まぁ、どちらでもいける歌です。今回は女性側の心境ですね。

 私たちの時代は、自分に好意を持ってる人は夢の中で会いに来てくれるなんて、ロマンチックな考え方が当然のようにありましてね、夢に出てこないってことは薄情者と思われかねなかったのですよ。そんな勝手な話があるか! って、あるんですねぇ。私も何度か怒られました。うちの奥さん、意外と強…ごにょごにょ。

 あ、うちの強い可愛い奥さん、あの業平の奥さんと姉妹でしてね、プレイボーイと言わしめるあの業平とうまく夫婦やってる人の妹ですから、そりゃ強い心の広い人なんですよ。まぁ、私も結構人気があるなんて自分で言っちゃいますが、それよりも書道家で通ってます。業平ほど遊び歩いてるわけじゃないのに、写経をするときの素行が悪かったとかで地獄に落ちた、なんてひどい書かれ方したお話があるそうなんですよ。ひどすぎません? 『宇治拾遺物語』と『今昔物語集』にあるそうです。読んだことないけど。

 業平はいいですよねー。いつでも恋は真剣です、とかってアホなこと言っても許されてて。会うたびに違う彼女の話してましたけど、ああいうのが地獄に落ちるべきだと思うんですよ。あ、本命さんの話してました? いつも言うんですよ。名前は毎回違いましたけどね。あの平和な顔見てたら腹が立ってきますよ、ほんと。