百人一首 13.筑波嶺の
13 筑波嶺の 峰より落つる みなの川
つくばねの みねよりおつる みなのかわ
こいぞつもりて ふちとなりぬる (ようぜいいん/ようぜいてんのう)
筑波山から流れてくるあの『みなの川』がさ、下流に行けば行くほど水の量が増えていって、一番深いところで淵になるだろ? それとおんなじで、オレがお前を好きだって気持ちも昨日より今日って、しまいにはお前のことばっかり考えてんだよ。
〈作者の談〉
筑波山ってのはむかし「歌垣」って行事があった場所らしいぜ。なんでも、男女が集まってどんちゃん騒ぎするんだとか。その中で男が女に歌を送って、女がそれに返せなかったら一晩の相手になるんだって。すっげーうらやましくない? あ、いや、ウソ。オレは一途な男だから。ここの頂上は二つにわかれてて、それが男と女に見立てられてんだ。ってことで筑波山は男女の恋愛をイメージする「歌枕」によく使われてんだ。その山から流れてくる川が「みなの川」。「みな」は「男女」とも書く川で、下流で水が多くたまってるところが「淵」。そこんとこうまく使って、みなの川の淵と、好きな女への気持ちが募っていくぜ、っていうのを掛け合わせてあるわけ。なかなか直接的で素直な歌だろ?
この歌の相手、実はオレの嫁。オレって暴れ犬みたいな言われ方してるけど、ホント、恋には一途なのよ。だいたいオレの悪い噂流してるの、叔父の藤原基経(ふじわらのもとつね)なんだよ。9歳で即位して17歳で譲位。その後に即位したのが叔父さんイチオシの光孝天皇(こうこうてんのう)だぜ? なーんか策略感じちゃうだろ? でもまぁ、火のないところに煙は立たないっていうし? どれがウソでどこまで本当かは・・・フフフ。
ちなみにオレの嫁、光孝天皇の娘なんだよね。こいつと一緒になれるなら別に地位に未練はないな。だからオレ、一途な男なんだって。