和歌のあそび訳

マイブームの『百人一首』をいまどきな感じで訳してみました。 〈作者の談〉は歌の作者のコメント的な、解説を含んだフィクションです。 人格設定は妄想。

百人一首 17.ちはやぶる

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17 ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川

   からくれなゐに 水くくるとは (在原業平朝臣

  ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ

   からくれないに みずくくるとは (ありわらのなりひらあそん)

 

神話でもこんなすごい話は聞いたことないよ。龍田川が紅葉で水をくくり染めにするなんて。あー、もう、サイコーにきれいだよ。

 

〈作者の談〉

 龍田川は紅葉の名所でね、真っ赤な紅葉で川が染まってるのが、そりゃあもうきれいなんだよ。川がくくり染めしてるみたいだねって、ロマンチックに詠ってみました。あ、『くくり染め』って『しぼり染め』のことね。

 ネタ晴らししちゃうと、実は実際に川なんて見てないんだよね。これ、高子(たかいこ)さんとこの紅葉の屏風絵だったんだ。さらにさらにネタ晴らししちゃうと、屏風絵なんてどうでもよくて、ホントは高子さんの美しさを絶賛したうたなんだ。高子さんってほんとにきれいな人でさ、僕の一番大好きな人。好きで好きでたまらなくって、あるとき思いあまって二人で駆け落ちしたんだよ。あの一瞬は夢みたいで浮かれてたなぁ。まぁ、すぐに見つかって連れ戻されちゃったんだけどね。高子さんっていいとこのお嬢さんで、天皇の嫁候補だったもんだから仕方ないよね。

 そんなんで僕もなかなか出世できないでいたんだけど、クビにならなくてよかったよ。人のものになっても高子さんとは会って話もできるしさ。むしろ会えないほうが未練ないでしょって言う人がいるけど、僕は大好きな人とは離れたくないな。ちょっとでもそばにいたいと思うけど、変? そう言うとさ、プレイボーイは違うねぇ、とかって言われるんだけど、それとこれとは違うと思う。だいたい、妙な噂立ってるけど、みんな友達だからね? 恋人が三千人いたとか、幼女からおばあちゃんまでストライクゾーンが広いとか、そんな無茶苦茶な話、逆に僕が笑っちゃったよ。うん、まぁいいんじゃない? 面白いから。

 でもこれだけは言わせて。

 本命は高子さんです!