百人一首 9.花の色は
9 花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせし間に (小野小町)
はなのいろは うつりにけりな いたずらに
わがみよにふる ながめせしまに (おののこまち)
あーあ。あんなにきれいだった桜の花も、雨続きで台無しになっちゃったわ。あたしもちやほやされていい気になってたら、いつのまにか枯れたおばちゃんよ。はぁ・・・。
〈作者の談〉
若いってだけでいろいろとお得よね。歳なんか関係ないって思っちゃいるけど、そりゃああたしだって渋いおじ様よりはぴっちぴちのイケメンのほうが好きだし。
あたしも昔はぴっちぴちのお嬢さんだったのよ。美人だ、きれいだ、素敵だ、なんて誰からも言われたりしてね。鼻も高くなるってもんよ。もったいぶって誰にもなびかないで、思わせぶりな態度をとってたらいつの間にかきれいどころが代変わりしちゃってたわ。聞いたこともない家の頭の悪そうな女がもてはやされてるの。ないわー。ちらっと見たけどたいして可愛くもないし頭も悪そうだし、何がそんなにいいわけ? 若さ? 若さなの? そんなのすぐに消えてなくなるのよ。あたしを見てごらんなさい。残ってるのは過去の栄光だけよ。
みんながもてはやすあの桜の花だって、『長雨』が『降る』から見劣りしちゃったの。花のようにもてはやされたあたしも『眺め』がきれいだったのに、年月が『経る』につれてだんだんと見向きもされなくなってきたわ。世の中の男性って現金なものよね。
あーあ。真剣に告白してくれたあの人とお付き合いすればよかった。すんごくいい人だったのに、調子に乗って振り回してたら、不慮の事故で亡くなっちゃったの。自分の馬鹿さ加減にほんと愛想が尽きたわ。そんなんだからバチが当たったのね、きっと。