百人一首 5.奥山に
5 奥山に もみぢ踏みわけ 鳴く鹿の
声きく時ぞ 秋は悲しき (猿丸太夫)
おくやまに もみじふみわけ なくしかの
こえきくときぞ あきはかなしき (さるまるだゆう)
紅葉の落ち葉の中を歩きながら雄鹿が雌を探すんだって。そのときの鳴き声がメッチャ悲しそうに聞こえてくるんだよ。だから「秋=悲しい」ってイメージもあるんだよね。
〈作者の談〉
秋はホント、さみしいって言うか、切ないって言うか、しんみりとしちゃうんだよね。僕が住んでる山の中じゃ、花は散るし草は枯れるし、木もいつのまにか紅葉終わってるし。夜に鳴く虫が風流でいいなんて誰かが言ってたけど、毎日聞いてたら風流通り越してさみしくなってくるよ。まぁ、都のわずらわしさが嫌で隠居しちゃったんだから、文句なんか言う筋合いじゃないけどね。
でもねぇ、ときどき聞こえてくる鹿の声。あれ、最初聞いたときはふーん、って感じだったんだけど、実は雄鹿が雌恋しさに鳴いてるなんて聞いたら、切なすぎて号泣しちゃったよ。誰かに見られたらちょっと引くくらい。ひとりでよかった。実はここに住む前、彼女にフラれちゃってさ。雄鹿の気持ちがわからないでもなくて。鹿の気持ちとシンクロするのもどうかと思うけどさ。落ち葉をかき分けながら彼女を探してるって、想像しただけでも、あ、涙が・・・あぅぅ・・・僕だって会いに行こうと思ってたんだよ! それなのに好きな人ができたからもう来ないでってさぁ! ・・・大丈夫。もう泣かない。
ちまたじゃ、僕が山奥を徘徊してて、彼女を探してる鹿の鳴き声を聞いてしんみりしてる、なんて失礼な解釈されてるらしいんだけど、残念でした、僕は落ち葉を集めてイモ焼いてますぅ。